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阪神なんば線 建設秘話 【小説】69年間待ち続けた男   最終回 

第67話 最終回 鉄朗の墓前に開通を報告する。


開通式を終え鉄朗は阪神芦屋駅まで足を伸ばした。

鉄朗のお墓参りをするためである。

鉄朗の墓は阪神芦屋駅からタクシーで10分ほどの鷹尾山の麓にあるお寺にあった。

駅前の花屋でお花を買い、お寺に着いた、住職にお願いして、墓に案内して貰った。

墓は見晴らしの良い高台にあり、鉄朗が愛した阪神電車が見通せる場所に建っていた。
墓には、真新しい花が供えられており誰かが先にお参りしたようだった。

墓に、水を掛け、お花を捧げ、お線香を上げてから。
鉄朗に話しかけた。
『鉄朗さん、僕が何に乗ってきたか知ってるかい? 近鉄電車だよ! 誰か先に鉄朗さんに知らせたかも知れないけれど、鉄朗さんの阪神なんば線がついさっき開通したんだヨ!それで早速鉄朗さんに知らせなくちゃ、と思って乗ってきたんだよ。』
『実は今まで鉄朗さんには言わなかったけど、気持ちが落ち込む度にナンバ駅待避線の突き当たりの壁の前に立ち、”今にきっとこの壁が無くなり、阪神の地下トンネルがこの先に続く日が来るから、それまでは元気で頑張らなくちゃ”と自分に言い聞かせてきたんだよ…、鉄朗さん、その日がやっとやってきたんだよ』
『初めて鉄朗さんと出会った日、鉄朗さんは覚えているかい?』
『あれからもう69年が経ったんだね。』
『あの頃のことを、昨日のように思い出すよ、2人で毎日夜遅くまで頑張って、特許申請書類を作ったんだよね。』
『鉄朗さんには色々教えて貰って、剣道と合気道以外知らないスポーツ音痴の僕に野球の楽しさを熱っぽく語ってくれたんだよね。』
『平成16年に近鉄バファローズは無くなってしまったんだが、鉄朗さんのおかげで、野球放送を見るようになったよ。』
『ご免ご免、今日は開通式の様子を報告に来たんだった、鉄朗さんに会うと、昔が懐かしくて、つい昔話をしてしまって。』
『一番線に始発の祝賀列車が到着する様子は、実に感動的だったよ、音楽隊の六甲下ろしに迎えられて、一番列車が入線してきたときには、思わず涙が出たよ。』
『祝賀列車から降り立った君ン所の安藤社長と。うちの国分君ががっちりと握手をしてね。感動的だったよ』
『インタビューで国分君がね、これで、白鷺城と名古屋城が近鉄特急で結ばれるとつい言っちゃってね、安藤さんから窘めめられる一幕があったりしてね、つい笑っちゃったよ。』
『アアそうそう、祝賀列車に招待された鉄朗さんのお孫さんに会ったよ。やあ、あんまり鉄朗さんにソックリだったんで、驚いたよ。』
『僕も92に成ったし、何時君ん所に行っても可笑しくないんだけど、もう少し見届けたい夢もあるし、もう少し待っててくれ。』
『実は、この前うちの国分君に打ち明けたんだが、”南大阪線をなには筋に乗り入れて、新大阪まで、延ばしてみてはどうか”とね。』
『あの国分君だから、真意は読めないが、”おもしろいアイデアだから企画部に一度検討させてみる”と言ってくれてね、ついでに”実現するまで生きておいてください”と言われたよ』

徹路は、鉄朗と会話を楽しむように、独り言を言い、最後にもう一度手を合わせてその場を去った。

午後3時頃富雄の自宅に戻り、仏壇の前に、座敷机を置き、家政婦さんに頼んで、一合とっくりを燗して貰い、白菜の淺漬けをつまみながら仏壇の前の座敷机に座り、亡き妻梨花に報告を始めた。
『ただ今戻ったよ、実はね、今日は鉄朗さんに会いに芦屋川まで行ってきたんだよ、イヤ実はお前もよく知っている阪神なんば線が今日やっと開通してね、そのことを鉄朗さんに報告に行って来たんだよ、』
『69年前はお前さんにもずいぶん、苦労を掛けたが、今日やっとお前さんの苦労に報いることが出来たようなきがするよ』
『これで、孫達にも、”お爺ちゃんは嘘つきだ”なんて言われなくて済むようになるよ。ワ、ハ、ハ、…』
『92に成ったけれど、もう少し待っていておくれ、鉄朗さんにも言ったんだけれど、今度は南大阪線を新大阪まで乗り入れたいんだ、実現の可能性は少ないけれど、夢が叶うのを見届けるまではもう少しこちらに居させて貰うよ。』
慣れないお酒を飲んだ、徹路は良い気持ちになってそのまま仏壇の前で寝入ってしまった。


終わり


長い間のご愛読有り難う御座いました。
69年間待ち続けた男は今回をもちまして最終回とさせていただきます。
今後ともお引き立て下さいますようお願い申し上げます。
                                     デジタヌ


[2008/03/26 22:14] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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