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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第64話  

第64話 徹路の感慨


2006年(平成18年)3月近鉄けいはんな線 生駒ー学研奈良登美ヶ丘間の新線が開業した。
近鉄久々の新線誕生である。
大阪市、大阪府、奈良県、からの要請を受けての、東大阪線の延伸工事であった。
近鉄一筋の土建屋としては久々の新線建設でもあり、張り切らざるを得なかったが、正直それほど燃える工事ではなかった。


機械化が進んだ今の工事では、現場の土建屋の経験は余り必要なくなっていた。
さらに、トンネルと盛り土が殆どの工事ではさほど技術者としての興味もそそられ無かった。


それに、今までの路線と違い、全くの単独路線である。
当初より赤字経営が確実視され、将来廃線の憂き目にあわないとも限らない路線である。
何故コンナ路線を引く羽目になったのか徹路には納得いかなかった。


2007年(平成19年)秋、阿倍野駅周辺再開発プランが発表された。超高層ビルを中心とする新たなる、ショッピング商業ゾーン開発計画である。
徹路は、何ともやるせない気分になった。
最近の近鉄のやっている事は、何か首をかしげたくなることが多いと感じていたが、何で今更、阿倍野ターミナルの再開発なのか…。
たった20年前、大阪きっての規模のデパートとして開店したばかりの阿倍野本店が、建物寿命をまたずして取り壊され、数十階建ての高層ビル群に生まれ変わる等、理解できない。


”どうして…、あの時、事業本部長の私がやったことはいったい何だったんだ…。”


確かにこの間、関西新空港が開港し、現在は滑走路2本を持つ国内初の24時間空港として運用されているし、西側の赤十字病院跡地の再開発で天王寺・阿倍野界隈の昼間人口は増えてきた。JR天王寺駅にも天王寺ミオが開店し、近鉄阿倍野店のインパクトは薄れてきたかも知れない。


しかし、今ある建物をぶち壊してまでリニューアルする必然性はいったい何処にあるというのか…。


徹路には、近鉄のやっていることはホリエモン紛いの、地上げによる資産価値の操作と株価操作で資産総額の増大を狙っているようにしか写らないのであった。


どうひいき目に見ても、近鉄が単独でいくら頑張っても”キタ”や、”ミナミ”と肩を並べる大繁華街が阿倍野界隈に出現するとは思えない。


難波線の開業で、ターミナルとしての機能を失い、自滅してしまった上本町界隈に見切りを付ける事には諸手を打って賛成するが、ナンバに進出し遅れたからと言って、”今更天王寺・阿倍野界隈を担ぐ事は無いでしょう”というのが徹路の感想であった。


<続く>
[2008/03/23 19:09] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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