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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第37話  

第37話 寿美の葬儀


徹路は事前に総務に、”葬儀を行う実家は田舎なのでバス道から先は車では入ってこれない様な辺鄙なところ。出来るだけ、乗り合いバス以外での葬儀への参列は控えていただきたい。”と案内するように伝えておいた。


果たして、徹路の危惧は的中、お通夜から混乱は始まった。


戸数20個程の山間の集落に、3時頃から黒塗りのハイヤーと、社用車が押し寄せた。
村の道路はバス道までふさぐ大渋滞、騒ぎを聞きつけ押っ取り刀で出かけてきた村の駐在もお手上げの状態、本署に連絡して、応援を求める有様。

弔問に訪れる人の多くは前に進めない車から降りて、数百メートルを歩いてお参りしていただく事になってしまった。


コンナ騒ぎの中、徹路はじっと座って等おられず、手伝いに来てくれた、社員に指示を出し、参列者にはお礼の挨拶とてんてこ舞いの状態であった。騒動は10時近くなってやっと収まっ
た。


翌日は、前夜の騒ぎが伝わっていたのか、社用車、ハイヤーの類は少なかったが、今度は大和上市の駅前が大混乱、タクシーは統べて出払い、隣の下市口の営業所のタクシーも総出となったが間に合わず、乗り合いバスも超満員、臨時便を出す有様。そのバスも渋滞にあい、途中から歩き出す人も出るしまつ。事態を重く見た徹路は、葬儀屋に言って葬儀の開始を遅らせることにしたが、それも1時間がやっと、出棺後も訪れる人のために、徹路は実家で待つことにした。


この事が、徹路と、長女由有紀との関係を決定づけてしまった。


葬儀だと言うのに、悲しみをこらえている祖父を1人にして、席を立ったり座ったりあわただしく動き回り、最後のお別れにも現れない父のそんな姿に無性に憤りを感じてしまったのである。


葬儀が終わり、親族一同での会食が終わり、みんな帰った後で。
由有紀が徹路に詰め寄った。


『お父さんは、仕事以外は頭にないの』
『突然何を言い出すんだ。』
『父さんが仕事々で、家のこと お婆ちゃんに任せっきりにするからコンナ事になったのヨ』
『…』
『サッサト新しい奥さんでも貰えば良かったのヨ』
『…それは…』
『母さんの時だってそう、父さんが家を空けっ放しで、家に寄りつかない物だから、母さんがあんな事になったのヨ』
『…それは…』
『もう私イヤ、コンナ家出て行く。』
『家を出て行くとはどういう事なんだ、女の一人暮らしなど許さんゾ!』
『ご心配なく、そんなお金は有りません、会社の女子寮に入ります。』
『姉さん…』
『もう私ご免、コンナ家にいたら、私が殺されちゃう。』
『姉さん、なんて事いうの!』
『出て行きたキャ勝手にしろ!』
『父さんも何言うの、姉さんを止めて!』
『ハイ、永らくお世話になりました、来週にでも荷物をまとめて出て行かせていただきます。』
『姉さん…』
『未來、私、先に帰るわよ。貴女もサッサト帰ってらっしゃい。』
『姉さん…』


妹の止めるのも振り切って、由有紀は富雄に帰ってしまった。


<続く>


[2008/01/27 21:38] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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