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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第29話  

第29話 久しぶりの現場の匂い


来るべき”レジャー時代”に向け、東の玄関口名古屋駅の大改造事業が着工された。
同年11月にはターミナルビル着工、そして12月に駅構内大改造工事着工。
この時、徹路ははやる気持ちを押さえた。


”もう現場で陣頭指揮に立つ立場では無くなってしまったんだ”


それでも、工事となれば血が騒ぐ、適当な理由を付けては、現場を訪れた。
そんな現場で、ヘルメットに作業服、安全靴姿の、青年を見つけた、と言うよりまたしても向こうから大声を張り上げながらやってきた。先年 分室の庭先であった国分である。



『そこの杖ついたオッチャン、コンナとこに入ってきたら危ないがナ!』
『国分君、私だよ』
『私か、かがしか知らんけど、エエからハヨ出て行って!』
『国分君、布施ダヨ、布施』
『伏せ、伏せってうるさいオッサンやナ』


近くまで来て、顔をのぞき込んでやっと気がついた。


『ぶ、…部長じゃないですか?』
『コンナ所で何していらっしゃるんですか?』
『イヤ、突然ですまなかった』
『…こ、こちらこそ失礼ナ事申しまして、申し訳ありません』
『イヤ、…ところで丁度いい、現場を一通り案内してくれんかね』
『ハイ、かしこまりました。』


相変わらず、のお調子者である。


『所で、ココの工区は何処が施工しているのかね?』
『エエ~と』


突然、向こうの方から、誰かが叫んだ。


『徹路さ~ん』


徹路が振り向くと、かなりの年配の土工だった、


『…もしかしてヤリさんかい?』
『覚えているとも』
『チョット、アンタエライなれなれしいな』
『若造は、ひっこんどけ』
『ナンヤテ…?』
『国分君、いいんだよこの人は』
『でも、部長…』
『部長?アンタが、土木部長?』
『ちゃうで、オッサン、この人はその上の、企画統括部長さんヤ』
『企画統括部、聞いたこと無いな』
『ゆうてみれば、本部長と言ったところや』
『まあ、いいじゃないか』
『徹路さん、コンナ所になにしに来てるんだい』
『言って見れば、現場視察だよ』
『ええ、視察がずいぶん偉くなったんだな』
『いや、そんなことないよ、昔とかわらんさ』
『視察とやらが、おわったら、後でよんなよ、じゃ俺いくは』
『じゃ後で、場におじゃまするよ』


『へ、ずいぶんなれなれしいオッサンでしたね部長』
『オイオイ、オッサンはないだろう、あの人は、鑓水組の鑓水さんだよ』
『鑓水さんて、あの鑓水さん?』
『そうだよ、会長の鑓水さんだ』
『アカン、又やってもた』


その後、国分は、1年ほど土木部にいたが、居なくなってしまった。後で判ったが、土木部が性に合わないと勝手に転属を申し出て、名古屋輸送統括部の運輸部営業課に転属してしまったらしい。それも転属先を自分で見つけてきて、人事部長に直談判し自分から転属したという。



<続く>

[2008/01/19 15:08] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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