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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第26話  

第26話 突然の妻の死



翌年1960年(昭和35年)1月妻梨花が突然血を吐いて倒れた。慣れない土地に引っ越し、殆ど帰宅しない徹路に変わって、家を守っていた梨花は無理がたたって、結核を患っていた。


血を吐いて倒れるまで、発見が遅れたのは、徹路を心配させまいと、隠していたからだった。12才の由有紀と、10才の未來を抱えて、入院もまま成らず、隠していたらしい、救急車で病院に運ばれたが既に手遅れの状態で2週間後に無くなった。享年33才若すぎる死であった。


徹路が、病院に駆けつけたときには、梨花は既に帰らぬ人となっていた。
長女由有紀が、呆然と立ちつくす、徹路の胸元に、何度も、何度もコブシを叩きつけ、泣きながら、抗議共受け取れる質問をした。


『ネエ、どうして母さんは死んだの?ねえどうしてなの…父さん。ねえ…答えて、どうして、どうしてなの…』
傍らで、次女未來が、ワア、ワアないていた。
徹路には、何も答えられなかった。
長女のコブシを受けながらただ呆然と立ちつくすだけであった。
見かねて、徹路の母が、長女を抱きかかえて、引き離した。


この時以来、長女は徹路の前では決して、笑顔を見せなくなった。それどころか、徹路と目も合わせなくなり、徹路が帰宅すると、妹を引っ張って逃げるように姉妹の部屋に引きこもるように成った。
徹路は手遅れになるまで、気がつかなかった自分を責めた。


梨花の葬儀は近くのお寺で行った。吉野から出てきた梨花の実の母親は泣きくれるだけで、何も言わなかった、校長もじっと悲しみをこらえているかのような表情で、徹路とは一言も話さなかった。


葬儀が終わり、62才の母寿美が徹路に


『これからどうするつもりだね』と切り出してきた。
『さあ…どうした物か…、自分一人なら、食事は会社の社員食堂と行きつけの食堂で済ませるし、身の回りの事も何とかなると思うんだけどね、だけどこの子達の世話は自分一人ではどうすることも出来ないだろうし。』
『何を無責任なこといってんだよ、シッカリしなさい。』
『…ああ…』
『お前がそんな頼りないこと言う子だとは思わなかったよ』
『…』
『後に残されたこの子達が可哀相でたまらないよ…』
『さっきお父さんと話したんだけど…』
『私がこの家に来てこの子達の面倒を見ることにしたよ』
『…済まない母さん、でも父さんは?』
『父さんなら、近所に嫁いだ幸子が何とかしてくれるって言ってくれてるよ』
『そうか…、幸子にまた迷惑をかけてしまうのか…?』
『そんなことより、この子達の事を考えなさい』
『…ん…』
『取りあえず、明日一度吉野に戻って、身支度をして出てくるよ』『ありがとう母さん、…済まない』


翌日の夜、母は身の回りの物をたづさえて徹路の家に来てくれた。


<続く>
[2008/01/14 20:54] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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