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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第13話  

第13話 現場での活躍


翌日は、日曜だったので、朝から洗濯である、洗濯と言っても今のように電気洗濯機など無い時代、たらいと洗濯板を用いた手洗いである。
朝から、洗濯場は土工達でイッパイだった。土工達に混じり、フンドシ、作業衣を洗い、物干竿に干した。


部屋に戻り、掃除と身の回りの片付けを済ませ、お昼は場の食堂もお休みなので、近くの伊勢神戸の町中に出、駅前の食堂で適当に済ませた。
田舎町のこと、満足な書店もない。


仕方なく駅前のたばこ屋で、切手と、はがきを買い、恩師に近況報告と、専門書のむしんのはがきを書く事にした。


午後は、主任から預かっていた事務所の鍵で事務所を開け、施工図面を入念にチェックした。
気がついたら、7時近くになり、周囲が薄暗くなっていた。


翌週から、本格的に仕事に掛かった。


仕事の内容は、現場の監理であり、測量も重要な仕事であった。実際は下請けの監督の補佐と言ったところ。杖をついて、びっこを引きながら現場にでては、初めのうちは、

『チンバの兄ちゃん、危ないから向こうへいっとき。』

などと、土工にからかわれたりもした。


時が経つにつれ、徹路の実力が発揮されだした。
時として、施工図には、”どうやったらこうなるんだ”という箇所が出てくる物である。


下請けの現場監督が図面片手に頭を抱え込んでいるときこそ徹路の出番である。そうしたとき徹路は素早く解決策を見いだし、所長に申し出て施工図の修正を行った。


コンピューターの無い時代、そろばんと計算尺片手に製図台に向かい、修正作業は深夜に及ぶことも少なくなかった。


徹路が修正を行った箇所は、必ず徹路が施工に立ち会った。
『監督さん、これどうやったらええんや?』
何時しか、現場の土工達からはこうよばれるようになっていた。


徹路は、不自由な足で、鉄筋組をやって見せたり、鮮やかな手つきでノコギリを操り、複雑な形状の型枠を作って見せたりした。


若者に多い,理屈だけで相手をねじ伏せようとする尊大な態度など微塵もなく、謙虚で居ながら説得力のある発言、そして何より実直で熱心な態度が現場の土工達にも伝わり、工事が完成に近づいた8月初めには、誰からも尊敬され、信頼されるようになっていた。


『お早う、監督さん、良い天気やな』『監督さん、今日は暑なりそうやな』『明日は日曜やな、監督さん久しぶりに家帰るンカ?』など、朝の洗面所で気軽に声をかけてくれるようになった。


<続く>

[2007/12/22 20:26] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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