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【小説】69年間待ち続けた男、在る鉄道マンの半生 第9話 


<第9話 近鉄入社>


その年は、従軍で負った足と心の傷を癒すことに専念し、年末には、軽作業程度なら山仕事の手伝いも行えるまでに体力も回復していた。


その年(1943年昭和18年)の正月は久々に、家族全員が集うことが出来た。


恩師への年賀状に、近況と供に『体力も気力も戻ってきたし、そろそろ定職に就こうかなと考えております』旨を書き添えた。


翌年3月、帰還後半年が過ぎようとしていた頃、恩師から一通の手紙が舞い込んだ。


”君もよく知っている関西急行鉄道(現近畿日本鉄道)にいる、僕の知人に君のことを話してみたら、『是非、我が社で迎えたい』と言ってきた、ついては3月15日月曜日、同封の紹介状を携えて、上本町の関西急行本社の建設本部長 山本 武 氏を訪ねるように”
と言うような内容だった。


戦時でもあり、そうでなくとも就職難のおり、体の不自由な身で、第一線の技術者に復帰出来るとは考えても居なかった。しかし、徹路の思いとは裏腹に、内地の企業にとって技術者の不足は深刻であった。 


3月15日朝の電車で大和上市からその年の2月新しく本社の移った阿倍野橋の本社へ向かった。軍服姿で杖をついている徹路は、電車の中ではひときわ目立った存在だった。


8時30分の始業まで、ロビーで待ち、事務員に、応接室へ案内された。
しばらく待つと真っ黒に日焼けした、がっしりとした体格の、初老の男が現れた。


『君が、布施君か?』
『ハイ、初めまして布施徹路と申しますヨロシクお願いします。』ぶっきらぼうだが、暖かそうな人だった。
『まあ、かけたまえ。』
『早速だが、君のことは斉藤君から詳しく聞いている。』
『ハイ…』
『あすから、いや今日からでも我が社で働いて貰いたい所だが…』徹路をじっくりと眺め、一呼吸置き
『まあ…、切りの良いところで、4月1日から僕の所に来て貰うことにしよう』
『はい…』
『所で、軍服はイカンゾ、軍服は…』
『ハイ、済みません。他に、洋服を持ち合わせておりませんでしたもので…』
『そうか…、帰りに、となりのデパートに案内させよう。』
『じゃー、今日の所はもう帰って良い…。』
『イヤ…少し此処で待ってなさい。』
『はい…』

彼は、応接室をそそくさと後にした。


しばらくして総務課の杉山という主任が、現れた。
『本部長の指示でご案内します。ついてきてください。』
つっけんどんで、無愛想な人だった。


その日は、背広とワイシャツの採寸をし家路についた。


<続く>



[2007/12/11 20:56] 鉄道小説 | TB(0) | CM(0)

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